宝石のカットの種類や特徴は?ジュエリー選びに役立てよう
宝石はカットの仕方によって、美しさと価値が変わるとされています。そのため、カットはとても重要な工程です。また宝石の種類によって適したカットは異なり、それぞれの宝石が一番美しく輝くカットが施されます。本記事では、宝石の主なカットの種類や特徴についてご紹介します。
「ファセット」と「カボション」とは
ファセットカット
ファセット(facet)は、日本語で「切子面」、つまりカット面のことを指します。平らに磨いたカット面をさまざまな角度で組み合わせることで、幾何学的な形を作りだします。透明な宝石に用いられることの多い方法で、石の輝きを最大限に引き出せるのが特徴です。
カボションカット
カボションカットは、半球形に磨き上げるカットのことです。ファセットカットのようなカット面はなく、楕円形や三角形、四角形などに仕上げられることが多いです。不透明な石に用いられることが多く、石が持つ模様やつやなどの美しさを活かすことができます。
翡翠やオパールなどの半透明な宝石や、トルコ石などの不透明は宝石に使われることの多い方法です。
また一部の宝石には特殊効果を持っているものがあります。たとえば、猫の目のような光の線が出る「キャッツアイ効果」や宝石の内側に白い帯が見える「スター効果」などがあります。こうした宝石の効果を楽しむために、カボションカットに仕上げる場合もあります。
代表的なファセットカット
ファセットカットはさらに細かい種類に分けることができます。
ブリリアントカット
ブリリアントは1919年に宝石職人であったマルセル・トルコフスキー氏が開発した方法です。宝石の輝きを最大限活かすために計算されており、主にダイヤモンドに対して採用されています。さらに宝石の形状に合わせ、いくつかの種類があります。
・ラウンドブリリアントカット
ラウンドブリリアントカットはダイヤモンドを最も美しく見せるカットとされています。このカットを施すには、原石を約半分にまで削る必要があります。しかし、それだけの犠牲を払う価値のあるカットとされています。他のブリリアントカットとは違い、丸型となっています。頂部と下部の平面部が正八角形になる必要があり、正確無比な職人の腕を必要とします。
・ペアシェイプブリリアントカット
ペアシェイプブリリアントカットは、ペア(西洋梨)の形をしていることから名づけられました。また涙のしずくのようにも見えるため、「ティアドロップ」とも呼ばれています。大粒の宝石のカットに適しているとされ、ネックレス用のカットとしても人気があります。
・マーキスブリリアントカット
マーキスブリリアントカットは、水雷形とも呼ばれるボートのような形をしたカットです。マーキスとはフランス語で「侯爵」の称号のことです。原石が細長い場合に用いられることが多いです。58面体のものが多いですが、輝きが増すことから18面体にカットされたものもあります。
・ハートブリリアントカット
その名の通りハート形のカット方法です。個性的なカット方法として人気があります。日本ではあまり見られないカット方法ですが、欧米では人気があるカット方法とされています。
ステップカット
ステップカットとは、宝石の外周が四角形になるカット方法です。側面は平行にカットされています。側面から見ると下部が階段(ステップ)のように見えるため、ステップカットと名づけられたとされています。ステップカットにもいくつかの種類があります。
・エメラルドカット
各コーナーを長方形にカットした、八角形のステップカットです。エメラルドに用いられることからこの名前が付けられたといわれています。またダイヤモンドやルビー、サファイアのカットに使用されることもあります。
下部のパビリオン部はブリリアントカットほど厚みがないため、輝きの面では劣りますが、テーブル面が広いために宝石の透明度を引き立たせる方法として知られています。
・バケットカット
バケット(フランス語で棒状のフランスパンの意味)のような形をしたカット方法です。コーナーがカットされていない長方形のステップカットです。宝石を実際のカラットよりも大きく見せることができます。
このカットを施された宝石は、ジュエリーの中央に配置されたメインストーンの添えものとして配置されることが多いです。
・スクエアステップカット
正方形(スクエア)の形をしたステップカットです。シンプルな形であり、アンティークジュエリーなどによく用いられています。
ミックスカット
ミックスカットは、ステップカットとブリリアントカットを組み合わせたものです。宝石の上の部分と下の部分どちらがブリリアントカットもしくはステップカットでも、ミックスカットと呼びます。ブリリアントカットの視覚効果とステップカットのデザイン性を組み合わせることができるのが特徴です。
ミックスカットが登場したのは1960年代と比較的最近です。商業的に成功を収めているカット方法で、さまざまな宝石に用いられています。
ミックスカットには以下の種類があります。
・バリオンカット
ミックスカットの中で最初に登場したカットとされています。1971年に南アフリカのカット氏のバジル・ウォーターメイヤー氏が考案しました。研磨された側面部を持った八角形もしくは四角形のデザインが特徴です。
総ファセット数はクラウンに25、パビリオンに29、ガードル部に8のトータル62ものファセットを施します。パビリオン部に施されたパビリオンファセットによって、上部のテーブルファセットに十字模様を浮かび上がらせることができます。
・プリンセスカット
上面が正方形の形をしたカット方法です。1960年にイギリスのA・ネイジー氏が開発しました。ラウンドブリリアントカットよりも、研磨によって失われる原石部分が少ない場合もあります。メインストーンを引き立たせることができるため、三角の石を脇に飾るデザインのものが多いです。このカットは輝きを最大限にするためには、深さを必要とするとされています。ダイヤモンドだけでなくさまざまな宝石に使われています。
強い輝きを持たせられるのと同時に、落ち着いた雰囲気を演出できます。エッジ部分が欠けやすいため注意が必要です。
・トリリアントカット
トリリアントカットとは、上部が三角形(トリリアント)の形をしたカット方法です。アムステルダムのアッシャー社が開発しました。トリリオンやトリリアンとも呼ばれています。
通常角を切り取った形をしており、ファセットのデザインも多様です。
・レイディエントカット
上面が八角形の形をしたカット方法です。バリオンカットによく似ており、バリエーションが豊富なのが特徴です。
ファセット数が70あります。レイディエントカットもたくさんの種類があり、さまざまなアレンジが施されるのが特徴です。
・フランダースカット
ベルギーのフランダース地方で開発されたカット方法です。上面が八角形をしています。
ローズカット
ローズカットは、16~17世紀頃に開発されたカットとされています。完成した形がバラのつぼみに似ていることから「ローズカット」と名づけられたといわれています。24個の三角形の面で構成されており、上から見ると円形に見えます。カットを施しても宝石の重量が変わりにくいため、あまり厚みのない宝石に用いられることが多いです。
・ラウンドカット
ラウンドカットは、上面が円形(ラウンド)の形をしたファセットカットです。カットの種類によって、「ジルコンカット」「シングルカット」などに分類されます。
・ジルコンカット
上面が円形(ラウンド)のファセットカットです。ラウンドブリリアントカットの下部のパビリオンに8つのファセットを加えたデザインです。
・シングルカット
シングルカットは、ファセットが17面のシンプルなカットです。宝石だけでなく、宝飾時計の文字盤に使用されることが多いです。
オクタゴナルカット
オクタゴナルとは、英語で「八角形の」という意味を持っており、八角形が美しいカットです。62面体のファセットカットで、輝きがさらに細かく奥行きを感じさせるのが特徴です。
クッションカット
クッションカットは、クッションのような形をしたカット方法です。長方形または四角形の角が丸まっているのが特徴です。ブリリアントカットの原型といわれています。
ブリオレットカット
ブリオレットカットはしずくのような形をしたカット方法です。宝石の表面を小さなカット面で覆います。サファイアなど、カラーストーンに多く用いられます。カットの難易度が高く高度な技術を必要とします。
イヤリング、ネックレスなどに使われることの多いカット方法です。
代表的なカボションカット
カボションカットは、モース硬度7以下の宝石によく用いられる方法です。これはカボションカットが、表面の細かい傷を目立たないようにする特徴を持っているためです。
カボションカットもいくつかの種類に分けられます。ここでは主な3種類についてご紹介します。
シングルカボション
シングルカボションカットは、底面が平らで表面のみを磨いたカットです。曲施になっており、横から見るとドーム形に見えます。
ダブルカボション
ダブルカボションカットは、底面と表面の両方が磨かれたカットです。横から見ると楕円形になっているのが特徴です。シングルカボションカットを2つくっつけたような形をしています。
ホローカボション
底面がくぼんでいるカットです。内側に向かってくぼませると空洞ができ、光が通りやすいのが特徴です。
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カットで違うジュエリーの印象
宝石のカットは主にファセットカットとカボションカットに分けられます。ファセットカットは宝石の輝きを最大限に引き出すことができるカットです。一方でカボションカットは、宝石本来の色合いを楽しむために用いられることが多いです。カットの仕方によってジュエリーの印象は全く変わってきますので、自分の好みのカットを選んでみましょう。