シグネットリングとは?由来や歴史をご紹介します
シグネットリングは、現在ではファッションジュエリーとして使われていますが、実は長い歴史を持つ由緒正しいリングです。日本では、あまり知名度が高くありませんが、アンティーク市場では人気があるアイテムです。本記事では、シグネットリングの概要や歴史、着用ルール、意味するものなどをご紹介します。
シグネットリングとは
シグネットリングは、印章の機能を果たす目的で作られた指輪のことを指します。現在ではハンコやサインを書くように、数百年〜数千前の人々は、シグネットリングを署名目的で使用していました。特にヨーロッパ貴族は、紋章をリングに彫刻し、それを身に付けました。そして、分家や縁組などでバリエーションが生まれ、出自を表すものとして一人ひとり別々のデザインが作られたとされています。そして、封蝋をする際にリング上部に紋章を押し付けることで「間違いなく自分が封をした」証になるとされました。
その後、近代になってから、紳士のファッションは基本的にシンプルなものが鉄則とされていました。華美なアクセサリーや装飾はNGとされていたため、シグネットリングは自らの地位を証明するための貴族の証として広まっていったと考えられています。
シグネットリングの歴史
シグネットリングの発祥は、紀元前3,500年ごろのメソポタミア文明だとされています。このころは、リングではなく、ローリングシーリングとされる筒状のアイテムでした。これは、筒の表面に絵柄を彫って、それを粘土の上で転がすことで、スタンプのように使われていたと考えられています。ローリングシーリングは、現代でいうハンコの役割があったとされています。遠くの国に物品を運ぶ時などに、印を押していたようです。
この筒状のローリングシーリングが、リング状になったのが古代エジプトとされています。当時のリングは「ファイアスリング」と呼ばれていました。リング状になることで、「自分が認めた」という証である意味合いが強くなります。そのため、ファラオや貴族、宗教的指導者などが権威を示すために身に付けられるようになりました。
その後、ローマ、ギリシャ、ビザンツ帝国の時代など、多くの国で多様なシグネットリングが作られることとなります。中世になると、イングランド国王エドワード2世が公式文書にシグネットリングを署名することを定めます。このころから、シグネットリングが上流階級に欠かせないアイテムとされました。当初は紋章などの絵柄が彫られていましたが、中世になると家紋やイニシャルなどが彫られるようになります。主に手紙や重要な書類に用いられているようになりました。このころのシグネットリングの効力は大きく、持ち主が無くなった際には死後に文章を偽造されないように、破壊していたとされています。しかし、代替わりする度に作り直すには費用がかかりすぎるため、徐々に父から息子へ受け継がれるものになりました。裕福な王族などのみが、一代限りの自分だけのシグネットリングを持っていることとなったのです。
さらに時代が経つと、次第に紋章から宝石を付けるという風潮に変わってきます。身分を表すものではなく、宝石を付けることによりジュエリーや財産であることが注目されるようになってきたのです。そして、現在のファッションジュエリーとしてのシグネットリングに移行してきました。
また、通常、シグネットリングは社会的地位の高い男性が使用してきたものでした。そのため、歴史的に女性が身に付けることは稀だったとされています。
シグネットリングの着用ルール
由緒ある歴史があるシグネットリングには多くの着用ルールが存在しています。現在では、厳しめのルールが決まっているわけではありませんが、イギリスでは暗黙の了解として慣例が存在していたとされます。ここでは、その一部をご紹介します。
・利き手と反対の小指に身に付ける
・男性の場合紋章を外側に、女性の場合は内側に向けて身に付ける
・自身と関係ない肩書や称号のシグネットリングは着用しない
・王冠を冠したデザインは貴族や王族の称号がある人のみ など
中世の紳士達は、シグネットリングを利き手と反対側の小指に身に付けていました。これは、小指には宗教的意味合いが存在しなかったからだとされています。ただし、使いやすさや個人の好みによって付ける指が異なっているケースもあります。現在では、小指用だけでなく、さまざまな指に付けるシグネットリングが登場しています。
印章以外に象徴するもの
シグネットリングは、印章以外に着用されるケースもあります。主に以下の意味を持って着用されています。
愛や死
愛や死などの意味を持ったシグネットリングも制作されています。数は多くないですが、両家の紋章を組み合わせることで愛の象徴にしたり、略語で愛の言葉を刻んだりしていました。また、古代ローマ時代には、結婚を祝福しているキリストと夫婦を彫ったリングなどもありました。
死を意味するものとしては、畏敬の念を持って「メメントモリ」の意味を込めたリングも制作されています。これは、死と隣り合わせの日々を過ごすことで、生きる大切さを説いているとされています。骸骨などが描かれているデザインが多いです。
共同体・教育機関
大学などの教育機関を卒業する際には、紋章やモットーなどが刻まれたシグネットリングが配られることがあります。日本ではなじみがありませんが、欧米の大学ではこうした「カレッジリング」を着用する方もいます。
共同体として代表的なのは、フリーメイソンや十字軍です。互いの連結や帰属などを示すことを目的として、シグネットリングを着用していたとされています。特にフリーメイソンは、等級に合わせた色や図柄のシグネットリングが作られていました。これにより、啓蒙活動や個人のステータスの誇示などに使われていました。
職業
自身の職業を示すために、シグネットリングが使われることもあったそうです。中世の時代には、仕事の取引で必要なサイン代わりに、屋号を彫ったものが用いられていました。これは「マーチャントリング」とも呼ばれています。現在でも、医師や弁護士などが職業を象徴するシンボルを彫ったリングを身に付けることがあります。
宗教的意味合い・魔除け
シグネットリングは宗教的意味合いや家の意味合いでも用いられていました。リングというものは、もともと想像力や永遠を表すとされています。そのため、ベゼル部分に護符やシンボルになる言葉を刻んで、魔除けとして使われていたそうです。たとえば、古代エジプトにおいては再生の象徴とされたスカラベ、キリストを象徴する魚がシンボルとして刻まれることもありました。
また、ローマ教皇や枢機卿などは、聖職者用のシグネットリングを身に付けています。さらに、サファイヤやアメジストなど、キリストや聖母マリアとつながりがあるとされている宝石をセットにしていることもあります。次代の教皇が選ばれる際には、先代のシグネットリングは破壊されることとなっています。
呪い
少ないですが、「呪い」を刻まれたシグネットリングもあるとされています。たとえば、キリスト教徒でなかった所有者シルウィアヌスから、キリスト教徒であったセニキアヌスがリングをぬぐいます。このリングには、「セニキアヌスよ、神と共にあらんことを」と刻まれていたのですが、19世紀になって「セニキアヌスによって盗まれた印章リング」という意味が刻まれた呪詛板がみつかったのです。
なぜ現代でもシグネットリングが人気なのか
ではなぜ、現代でもシグネットリングが人気を集めているのでしょうか。ここでは、現代でもシグネットリングが人気の理由についてご紹介します。
デザインがシンプル
現在のシグネットリングは、イニシャルなどを刻んだシンプルなデザインのものが多いです。そのため、どんなシーンでも身に付けやすく、上品な印象を与えてくれます。おしゃれをしても、リングが悪目立ちしてしまうと、ファッションがまとまりにくくなります。シンプルなシグネットリングは、どんなコーデにも合わせやすいため、年齢を問わずに楽しめるでしょう。そのため、シグネットリングはメンズジュエリーの代表格といわれていますが、レディースでも人気があります。
一昔前は、他家の紋章が刻まれたシグネットリングを身に付けるのはタブーとされてきました。しかし、現在は契約や伝統、名誉の象徴としての意味合いは薄れており、図柄の美しさを楽しむアイテムとして使われることが増えました。
現代のシグネットリングには、シャープなものから無骨なもの、ストーンを付けたものなど、さまざまなデザインのものが誕生しています。こうした選択肢から選べるのも、人気の理由とされています。
有名ブランドのシグネットリングも人気
有名ブランドがシグネットリングを販売したことでも注目を集めています。たとえば、ティファニーが昔ながらのデザインを残したシグネットリングを販売したことで、人気を集めました。
もともとは紳士のジュエリーでしたが、現在では女性でも身に付けられるファッションジュエリーとして扱われています。たとえば、恋人同士でお互いのシグネットリングを交換したり、ユニセックスジュエリーとして楽しめたりするのも、人気の理由の一つといえるでしょう。
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シグネットリングを身に付けてみよう
シグネットリングは、もともとは古い歴史を誇るリングで、印章として機能していました。時代によってさまざまなルールがあり、紋章以外にもさまざまなシンボルが刻まれています。現在は、昔ながらの用途ではなく、個人的なシンボルやアイコンなどの表現できるアイテムとして人気があります。オーダーメイドのシグネットリングもあるため、今後は自分だけのアクセサリーを作りたい方に人気が出る可能性もあるでしょう。ぜひ、シンプルでどんなコーデにも取り入れやすいシグネットリングを身に付けてみてはいかがでしょうか。